17.サワー・エール
17D.ストレート(アンブレンディト)ランビック
アロマ:明らかな酸味(サワー)/酸性(アシッディク)のアロマが若い製品では支配的であることが多いが、熟成と共に裏庭、土、ヤギ、干草、馬、馬用の毛布などと表現されるアロマと混ざるに従って弱まる。穏やかなオークや柑橘類のアロマは好ましい。腸内細菌[野菜、スモーク、カビ、子供のおむつ等と表現される]、スモーク、葉巻やチーズのアロマは好ましくない。古い製品は一般にフルーツ的でリンゴやハチミツのアロマを伴う。ホップ・アロマは無し。ダイアセチルは無し。
外観:薄い黄色〜濃い金色。熟成によってビールの色が濃くなる傾向がある。透明度は曇り〜良好。若い製品は濁っていることが多く、古い製品は一般的に透明。泡持ちは一般的に良くない。泡の色は白。
フレーバー:若い製品は顕著な酸味(サワー)や乳酸を示すことが多いが、熟成によりモルト、小麦、裏庭と言った特徴とより良いバランスとなる。フルーツのフレーバーは若いランビックでは質素だが古い製品ではより複雑で、リンゴ等の軽いフルーツ、ルバーブ[大黄の葉柄]、ハチミツ等を思わせる。オークまたは柑橘類のフレーバー(大抵はグレープフルーツ)が時折目立つ。腸内細菌、スモーク、葉巻の様な特徴は好ましくない。ホップの苦味は弱〜無し。ホップ・フレーバーは無し。ダイアセチルは無し。
マウスフィール:ライト〜ミデアム・ライト・ボディ。終了比重が低いにも関わらず、口いっぱいに広がる沢山のフレーバーにより水っぽくはない。大雑把に言えばランビックは熟成とともにドライになるので、ドライ感が熟成の簡単な指標となる。中〜強い酸味(タート)、口をすぼめる資質で鋭い収斂味は無い。殆ど〜完全に無炭酸。
総合印象:複雑、酸味(サワー)/酸性(アシッディク)、色の薄い、小麦主体のエールで様々なベルギーの微生物により発酵される。
歴史:自発的に発酵したサワー・エールでブリュッセル(センヌ渓谷)とその周辺に由来し数世紀の歴史を持つ農家式醸造の伝統を受け継ぐ。数は絶えず減少し続けている。
コメント:ストレート・ランビックは単一仕込みで、ブレンドしていないビール。ブレンドしていないので、ストレート・ランビックは醸造所の“家付きの特徴”を持つ真の製品であることが多く、グーズよりも変化に富む。一般に若い(6ヶ月)うちは、炭酸を充填せずに安く、飲みやすいビールとしてオン・タップで提供される。若い製品は深みのない酸味(サワー)になりがちで、それは複雑なブレタノマイセスの特徴が出てくるのに一年以上かかる場合が多いからである。腸内細菌の特徴は若すぎるランビックであることを示していることが多い。顕著なビネガーやサイダーの特徴はベルギーの醸造者によれば欠陥。野生のイーストやバクテリアは全ての糖類を発酵するので、完全に発酵が終了した時にだけ瓶詰めされる。ランビックは無炭酸で提供されるのに対して、グーズは発砲性で提供される。熟成したホップが使われるのでIBUはおおよその値。というのもベルギー人はランビックにおいてホップは苦味付けよりも防腐剤として使うからである。
原料:モルト化していない小麦(30 - 40%)、ピルスナー・モルト、(3年)熟成した(シュラネ[surannesフランス語で『期限切れ』等と言った意味])ホップが使われる。熟成したホップは苦味よりも防腐効果の目的で使われるので、実際の苦味強度を見積もるのが難しい。これらのビールは自然に発生するイーストやバクテリアを使い、それがオーク製の樽で優勢となり自発的な発酵がなされるのが伝統的。ホームブルーやクラフトブルーで作られる製品はサッカロマイセス、ブレタノマイセス、ペディオコッカス、ラクトバシルスを通常含む純粋培養したイーストを使うのがより一般的であり、これはブリュッセルやセンヌ川渓谷周辺地方で優勢な微生物環境の効果を再現しようと試みられて作られたものである。瓶から採取された培養菌が時として用いられることがあるが、どの微生物が活性かを知るのは容易ではない。
諸元:OG:1.040 − 1.054, FG:1.001 − 1.010, IBUs:0 − 10, SRM:3 − 7, ABV:5 − 6.5%
市販例:容易に入手できる瓶詰め製品はCantillon Grand Cru Bruocsellaだけで、作り手が瓶詰めに値すると判断した単一仕込みのビンテージ。デ・カムが非常に古い(5年)ランビックを時折瓶詰めする。ブリュッセル周辺では特別なカフェがあり、ブーン、デ・カム、カンティロン、ドリー・フォンティネン、リンデマンス、ティママン、ジラルダンと言った老舗のブルワリーやブレンダーのランビックをドラフトで出すところが多い。
2010年04月26日更新
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