19.ストロング・エール
19B.イングリッシュ・バーレイワイン
アロマ:非常に濃厚で強烈なモルト感、多くはカラメルのようなアロマを伴う。中〜強力なフルーツ感があり、多くはドライ・フルーツの特徴を有する。イングリッシュ・ホップのアロマは穏やか〜強烈まで幅がある。アルコールの芳香は弱〜中だが、決してザラザラ感、刺激的、シンナーのようではない。これらの芳香の強さはたいてい熟成によりやわらぐ。アロマは濃厚な特徴を有することもあり、パン、トースト、トフィー、モラセス、ゴールデン・シロップ等を思わせる。熟成した製品はシェリーのような資質、あるいはワインまたはポート・ワインのような芳香、加えて通常はより抑えられたモルト・アロマを有する。
外観:色はあざやかな金色〜非常に濃いアンバーまたは濃い茶色に及ぶ。多くはルビー色の輝きで、不透明であってはならない。弱〜中のオフ白の泡で、持ちはあまり良くない。冷たい温度ではチル・ヘイズにより濁ることもあるが、通常は暖かくなると良〜きらめくような透明に澄む。色は深みを帯びて見えることがあり、まるで厚いレンズを通して見ているかのようである。アルコールや粘度の高いものではビールをグラスの中で回した時に“脚”が見られる。
フレーバー:強力、強烈、複雑、折り重なるモルトのフレーバーがパンやビスケット風〜ナッツ、強いトースト、濃いカラメル、トフィー、モラセス風に及ぶ。中〜強いモルトの甘い味覚だが、フィニッシュはやや甘〜ややドライ(熟成による)。酸化またはワインのようなフレーバーが現れることがあり、複雑なアルコールのフレーバーがハッキリしていることが多い。アルコールのフレーバーはザラザラ、刺激的またはシンナーのようであってはならない。中〜かなり強めのフルーツ感で、ドライ・フルーツの特徴を伴うものが多い。ホップの苦味はつり合うのにちょうど良い〜しっかりとあるまで幅があり、それゆえバランスはモルティ〜やや苦いまでに及ぶ。弱〜やや強いホップ・フレーバー(通常は英国種)。ダイアセチルは弱〜無し。
マウスフィール:フル・ボディで噛みでがあり、なめらかで、非常に風味の良い舌触りを伴う(けれども長いコンディショニングではボディが低下する)。熟成したアルコール由来のスムースな暖かみがあり、刺激的やザラザラ感があってはならない。炭酸は弱〜中で熟成とコンディショニングによる。
総合印象:イングリッシュ・エールの中で最も濃厚かつ最強。モルティな濃厚さと複雑さ、強烈なフレーバーのオンパレード。これらのエールの特徴は時間の経過とともに著しく変化するので、それが何であるのかを見極めるために、若い製品と古い製品の両方が評価されるべきである。モルトの輪郭は大きく変化するので、全製品が可能なフレーバーやアロマを全て有しているとは限らない。
歴史:多くはブルワリーによって売りに出される最も強力なエールで、近年では多くの市販品がビンテージ付けされている。普通は発売に先駆けて十分熟成がなされる。冬またはホリデー・シーズンに関連することが多い。
コメント:多くはホッピーなビールだが、イングリッシュ・バーレイワインはアメリカン・バーレイワインほどホップの特徴はないものの、イングリッシュ・ホップが目玉。イングリッシュの方がアメリカン・バーレイワインに比べてより色濃く、よりモルト的、よりフルーツ的で、より濃厚なスペシャル・モルトのフレーバーを目玉としている。
原料:良く発芽したペール・モルトが穀物原料の骨格を形成し、適度な量のカラメル・モルトを伴うこと。濃色モルトはとりわけ控えめに使用し、もし使うとしても、色の大部分は長時間の煮沸によるくらいに留めること。ノース・ダウン、ターゲット、イースト・ケント・ゴールディング、ファッグルといったイングリッシュ・ホップ。性格の強いイングリッシュ・イースト。
諸元:OG:1.080 − 1.120, FG:1.018 − 1.030, IBUs:35 − 70, SRM:8 − 22, ABV:8 − 12%
市販例:Thomas Hardy's Ale*, Burton Bridge Thomas Sykes Old Ale, J.W. Lee's Vintage Harvest Ale, Robinson's Old Tom, Fuller's Golden Pride*, AleSmith Old Numbskull*, Young's Old Nick* (アルコール7.2% ABVは珍しい), Whitbread Gold Label, Old Dominion Millenium, North Coast Old Stock Ale (熟成した場合), Weyerbacher Blithering Idiot [*印は日本で入手可能と思われるもの]
2010年04月17日更新
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