3.ヨーロピアン・アンバー・ラガー
3A.ヴィエナ[ウィーン]・ラガー
アロマ:やや濃厚なジャーマン・モルトのアロマ(ウィーン・モルトやミュンヘン・モルト)。軽いトースト・モルトのアロマが感じられることもある。オクトーバーフェストに似ているが、それほど強くない。クリーンなラガーの特徴でフルーツのエステルやダイアセチルは無し。ノーブル・ホップのアロマは弱〜感じられない。カラメル・アロマは相応しくない。
外観:明るい赤みがかったアンバー色〜銅色。輝くような透明度。大きく、オフ白の持ちの良い泡。
フレーバー:ソフトで上品なモルトの複雑さが真っ先に感じられ、バランスのとれたフィニッシュを演出するのに十分なホップのしっかりとした苦味を伴う。ウィーン・モルトを使うことによるトースト感。ローストおよびカラメルのフレーバーは無し。かなりドライで、モルトとホップ両方の苦味が後味に残る。ノーブル・ホップのフレーバーは弱〜無し。
マウスフィール:ミデアム・ライト〜ミデアムのボディで穏やかなクリーミーさを伴う。中程度の炭酸。スムース。ややクリスプなフィニッシュ。アルコールによる暖まりを少し感じる場合もある。
総合印象:ソフトで上品なモルト感が特徴で、フィニッシュにおいて甘くならずにドライとなる。
歴史:オリジナルのアンバー・ラガーはAnton Dreher[アントン・ドレハー]によってラガー・イーストが分離されたすぐ後に作られた。発祥地ではほとんど絶滅したものの、メキシコでは1800年代後半にSantiago Graf[サンティアゴ・グラフ]とその他のオーストリア移民のブルワーによって持ち込まれ、今でも存続している。残念ながら、現代の製品は副原料を使ったものがほとんどで、このスタイルの好適な製品である濃厚なモルトの複雑な特徴が弱くなっている。このスタイルの特徴はモルティング方法(ウィーン・モルト)に負うところが大きい。全体的にオクトーバーフェストよりも軽いモルト感ながら、明らかにモルトに傾いたバランス。
コメント:アメリカで造られるものは少々強く、ドライで苦みの強いこともある一方、ヨーロッパで造られる物は甘い傾向にある。かつてはメキシコのアンバー・ラガーやダーク・ラガーにより真正に近いと言われるものが多数あったが、残念ながら現在では甘く、副原料満載のアメリカン・ダーク・ラガーのようになってしまった。
原料:ウィーン・モルトは軽いトースト的で複雑、メラノイジン豊富なモルトの特徴を有する。オクトーバーフェストと同じように、ヨーロッパのホップ(ノーブル種が望ましい)に加えて、最高品質のモルトだけが使われる。やや硬く、炭酸塩の豊富な水。色と甘味を付けるためにカラメル・モルトやさらに色の濃いモルトが使われるが、カラメル・モルトは著しいアロマやフレーバーを、ダーク・モルトはロースト感を付けてはならない。
諸元:OG:1.046 - 1.052, FG:1.010 - 1.014, IBUs:18 - 30, SRM:10 - 16, ABV:4.5 - 5.5%
市販例:Great Lakes Eliot Ness (6.2%でIBU 35は珍しい), Boulevard Bobs 47 Munich-Style Lager, Negra Modelo*, Old Dominion Aviator Amber Lager, Gordon Biersch Vienna Lager, Capital Wisconsin Amber, Olde Saratoga Lager, Penn Pilsner [*印は日本で入手可能なもの]
2010年04月02日更新
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アロマ:濃厚なジャーマン・モルトのアロマ(ウィーン・モルトやミュンヘン・モルト)。多くは軽〜中程度のトーストしたモルト・アロマがある。クリーンなラガー・アロマでフルーティなエステルやダイアセチルは無し。ホップ・アロマは無し。カラメル・アロマはふさわしくない。
外観:濃い金色〜濃いオレンジ・赤色。輝くような透明度で頑丈でオフ白の泡が立つ。
フレーバー:最初はモルティな甘さだがフィニッシュはややドライ。独特で複雑なモルト感が、トーストの様相を呈することがよくある。ホップの苦味は中程度、ノーブル・ホップのフレーバーは弱〜無し。バランスはモルトよりだがフィニッシュは甘くない。カラメルやローストのフレーバが顕著なのは不適。クリーンなラガーの特徴で、ダイアセチルやフルーティなエステルは無し。
マウスフィール:ミデアム・ボディ、クリーミーな歯ざわりで中炭酸。スムース。完全に発酵していて、甘ったるいフィニッシュが無い。
総合印象:スムース、クリーンだが濃厚で、モルト質の深みを伴う。由緒あるモルト的なスタイルのひとつであり、モルティさを伴い、ソフトで複雑、上品だが決して甘ったるくないとしばしば表現される。
歴史:Gabriel Sedlmayrによるものが起源だとされ、ラガー・イーストが初めて分離されてすぐ後の1840年ごろ、Anton Dreherによって発明されたヴィエナ・スタイルを手直ししたものがベース。一般的には伝統的な醸造期の終わりを告げる春に醸造され、暑い夏の間は寒い洞窟や穴蔵で保管される。秋の本番にある伝統的な祭典で振る舞われる。
コメント:ドイツ国内向けの製品は金色になりがちで、強く、ピルス優位なヘレスのよう。ドイツから輸出される製品は一般的にはオレンジ・アンバー色で特有のトーストしたモルト風味がある。ドイツのビール税法上このスタイルはフォルビア(vollbier)に分類されるので初期比重は14°Pに制限されているが、アメリカで造られる製品は強めとなる。“フェスト”・タイプのビールは特別な場合のビールで、多くは日常飲まれるビールに比べて強めである。
原料:配合は様々であるが、多くの場合ドイツ産ウィーン・モルトが麦芽成分の中心で、ミュンヘン・モルトやピルス・モルトに加えてクリスタル・モルトが入ることもある。全てのモルトは最高品質の二条麦から作られる。ヨーロッパ産ホップ、特にノーブル種が最も真正に近い。いくらかアルカリ性の水(300PPMまで)でかなり炭酸が含まれていても良い。デコクション・マッシングをするとより豊かなモルト風味が引き出される。
諸元:OG:1.050 - 1.057, FG:1.012 - 1.016, IBUs:20 - 28, SRM:7 - 14, ABV:4.8 - 5.7%
市販例:Paulaner Oktoberfest*, Ayinger Oktoberfest-Märzen, Hacker-Pschorr Original Oktoberfest*, Hofbräu Oktoberfest*, Victory Festbier, Great Lakes Oktoberfest, Spaten Oktoberfest*, Capital Oktoberfest, Gordon Biersch Märzen, Goose Island Oktoberfest, Samuel Adams Oktoberfest (レイト・ホッピングが少々珍しい) [*印は日本で入手可能なもの]
2010年04月02日更新
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